江戸通りからさらに隅田川寄りに走る通り沿い、閑静なエリアに店を構えるレストラン「ナベノイズム」。2016年オープン後、翌年ミシュラン1つ星を獲得後、2019年度版より2つ星へと昇格してから5年連続獲得。
店名はシェフのニックネームである「なべシェフ」と主義・流行を意味するイズムからきています。
渡辺雄一郎エグエクティブシェフは辻調理師専門学校卒業後、さまざまな星付きレストランでご研鑽の末、2004年にシャトーレストラン ジョエルロブションのエグゼクティブシェフを努められたお方です。
店内は少し変わった配置で1階に調理場兼クロークがありダイニングエリアは階段を登り2階と3階に分かれています。この日は3階にご案内いただいたのですが、2階にはテラス席などもあったりとさまざまな座席タイプがあって面白い。
まずはグラスシャンパーニュを。アンリ・ジローのエスプリナチュール。芳醇な果実味に、キメの細かなクリーミーな泡立ち、木樽の優しい香りが素晴らしい。ですが、税サ込で1杯3,000円近くとバリバリのグランメゾン価格。まぁこの辺りはフランス料理という文化を体感していると思うことにしましょう。
その後はペアリングでお願いしました。
アミューズはめちゃんこ凝っていますねー。聖護院蕪のすりながし、カラスミとラディッシュやバターを合わせたピンチョス、うずら卵のムーレットなど、各所にフランス料理の技法を感じることのできるものであり、ポーションを大きくすれば立派な前菜の一皿として成立するクオリティです。
パンは焼きすぎたのかなんだか普通でした。
お次はスペシャリテである蕎麦がき。この蕎麦がきはその日の予約分に合わせて、当日蕎麦粉を挽き、仕上げる徹底ぶり。
乳化させているのか、一般の蕎麦がきと比べて口当たりが軽やか。昆布のジュレや甘エビとの相性もよく、江戸前のエスプリを感じる一皿です。
こちらには日本酒。秋田県の新政酒造が手がけるColorsシリーズ。口当たり軽やかで旨味を伴ったスタイル。
前菜には、牡蠣をコンフィやらパテなどさまざまな調理法で仕立てた一皿。これはめちゃんこ美味いですねぇ。付け合わせのネギも私が見てきた中でトップクラスに太く、味が濃い。ザクロのジュレや金柑のマリネ、パテにボウモアの香りを纏わせたりとアイデアまで圧巻である。
ワインはロワールのシュナンブラン。サヴニエール。リンゴやグレープフルーツを思わせる厚みのある果実味に、アカシアのような香りを感じます。透明感のある果実味に塩味を帯びたミネラルがカキとの相性抜群でした。
お魚料理は、塩ダラと白子。それぞれ異なる火入れを施しており、コントラストを感じるのが楽しく、アツアツの油を用いたソースも面白い。
こちらには、フランス ローヌのマルサンヌ。リッチな味わいと僅かにオイリーなテクスチャが印象的です。
メインは、牛肉のビール煮込み。グランメゾンのビール煮込み?と一瞬思ったものの、フランスフランドル地方の郷土料理であるカルボナードを、地元のエビスビールを用いながらキチッと昇華しています。
付け合わせのシュークルートやジャガイモのフォンダンまで抜かりなく旨い。
赤ワインは南仏のシラー、カリニャン、グルナッシュを用いたもの。凝縮感のある果実に加え、奥深さを感じる味わいで、お料理とも好相性。
デザート1皿目は、柿をテーマをしたもの。下の層にはコニャックを香らせた卵黄クリームにあんぽ柿、上にはカクテルの一種をイメージしたジンのグラニテと柿のカンパリマリネ。人生で最も柿を複雑に堪能できる一皿であり大変印象に残りました。
デザート2皿目は、林檎のデクリネゾン。フランス語でさまざまな調理法でひとつの食材を生かすことを意味します。
デザートにはフランス ロワールのシュナンブランを用いた甘口。蜜リンゴのようなリッチで上品な甘さ。
小菓子までも拘り高く、随所に駒形のエスプリを感じる品々。
コーヒは千住にあるカフェバッハ謹製コーヒーらしく、風味豊かで奥行きがあり、大満足。
以上、コース1.4万円ほどにグラスシャンパーニュとペアリングをつけ税サ込ひとり2.5万円ほど。
私はめっちゃ好き。料理の完成度が他のフランス料理店と比べても群を抜いています。それでいて、しっかり駒形のテロワールを融合させているのはお見事としか言えません。
お出迎えとお見送りにもシェフ自ら来てくださり、「楽しんでいただけましたか?」と。口で言うのは簡単だけど、お客様のためにみたいなレストランで重要なことをシェフが率先しているのはすごく印象的。
死ぬまで何度でも通ってシェフの哲学を理解したい。そう思えるほどのレストラン、オススメです。
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