牛込神楽坂駅から歩いて7分ほどに位置する「ル・マンジュ・トゥー(Le Mange-Tout)」。
オーナーシェフである谷昇シェフは、フランス料理業界の重鎮。業界関係者で知らない人はいないでしょう。
御年70歳にして仕込みのために屋根裏で寝泊まりなどしているらしい。最近はSNSにて調理技術などの解説動画を発信されていたりスゴすぎるお方です。
もっと頑張らねば。。。
こちらを知らずしてフレンチ好きを語るのはにわk。
店内に入るとすぐにピカピカに磨かれた清潔な厨房が目に飛び込みます。この日はたまたまゲストの全員が業界関係者?、かつ男性ということでしたが、谷シェフが笑いながら「今日はヤロウだけだけど、楽しんでいってくださいね。」と気さくに話しかけてくださいました。
2階に上がるとダイニング。5テーブルほどあり、コンパクトながらどこかアットホームな雰囲気を感じさせます。
ボトルワインの値付けは非常に良心的。しかしながら、料理の内容並びに流れがわからなかったため今宵はグラスにていただくことにしました。
フレッシュかつ繊細な味わい。グレープフルーツの皮のようなビターな余韻が心地よい。
アミューズはコンテチーズのグジェールとトリュフを用いたスープ。
教科書に載っていそうな見た目のグジェール、当たり前ですがシャンパーニュとの相性も抜群。コースがこれからスタートしていくんだと脳に刺激が届きます。
お料理一皿目は帆立貝のポワレ クスクスのスープ仕立て
ホタテの味わいも濃く、クスクスに用いられているサフラン(?)の香りもいいアクセント。
お次はスペシャリテ。鹿のコンソメ。手前には鹿の生ハムが添えられています。
外観以上に濃厚な力強い鹿の風味を感じます。水と塩と鹿のみでここまで液体までに仕上げるのに果たして何時間かかるのでしょう。少し方向性は異なりますが、アピシウスのウミガメのスープに近い迫力を感じる一皿でした。
前菜には、ショートパスタ。牛の赤ワイン煮込みを作り固めた後、それをソースとして用いた一皿。ビックサイズのフォアグラのソテーと一緒にいただきます。
めちゃんこ美味しい。どんぶりいっぱいに食べたい。本日1番のお皿です。
スライスされたトリュフも贅沢な量。「毎年この時期はトリュフを使いすぎて税理士のセンセイに怒られちゃうんですよね」とニコニコしながらシェフが話されており、フランス料理への愛がひしひしとこちらまで伝わってきます。
こちらに合わせてお出しいただいたのがボルドーの赤。カベルネソーヴィニヨン主体のかなりしっかりした味わいです。
うーん。この合わせの方の意図はあまり理解できません。コースの流れを勘案するなら、ブルゴーニュの白。もしくは赤ワインでもピノ・ノワールとかがベターな気がするのだけれど。お料理の香りが素晴らしいだけにもう少し繊細なワインで合わせたいなと個人的には思いました。
私の食べるスピードが遅かったのでしょうか。大切に味わっていたらサーヴィスの方に次の料理をもう間も無くでお出しします。と若干急かされ慌てて完食。
お魚はヒラメ。ミキュイにし、マイクロハーブのサラダと一緒にいただきます。
素晴らしい火入れ。たっぷりのソースと食べるとたまりません。キャビアも贅沢にあしらわれていますが、ところどころ塩気を足すくらいで、あくまでアクセント。
ワインはブルゴーニュの白。オート・コートの第一人者的存在であるドメーヌ・ジャイエ・ジル。
洋梨やシトラス、白い花のアロマに穏やかな樽香が心地よい。ミネラルもエレガンス。後から調べたら、シャルドネだけじゃなくピノプランも含まれているらしいですね。珍しい。
先のヒラメとピッタリの組み合わせでした。
お肉は鹿のロースト。忘れてしまいましたが、網脂を纏わせ一度火入れした後冷凍庫に入れ…?、とにかく難しそうな調理であったような気がします。ソースはジュ、付け合わせは赤ワインで煮たプラムと別皿でカブのブルーテ。
想像していたよりもクリアな味わいで、結構なボリュームがあるのにも関わらずスイスイと食べすすんでしまいました。。付け合わせも抜かりなく美味しい。
南仏のムールヴェードル。ブラックチェリーやイチジク、ダークチョコレートなどを感じます。まるでソースのような役割を果たしてくれます。こちらも安定感のあるマリアージュ。
デザートはいちごのパルフェ。
ショーソン・オ・ポム。いわばアップルパイですね。焼きたてのアツアツで思わず火傷しそうになりました。
〆にコーヒーをいただきフィニッシュ。
コース料理20,000円に、シャンパーニュ、グラス白×1杯、グラス赤×2杯いただいて、ひとり税サ込3万円。納得の支払い金額です。
これだけのフランス料理ならびにこれだけの距離で谷シェフを体感できるのであれば2万円はむしろ割安に感じます。
他方、サーヴィスが少しアレですね。私が合わなかっただけかもしれませんが、場面場面で少し、急かされるシーンがあり、なんだか気が休まらなかった。ワインに関しても、料理にどう合わせたのかみたいな説明があるといいのかと思いました。ワインの味わいよりも私はソムリエの意図を感じたい。
チームとしてお店を運営してきたのでしょうから、他人の私ごときがそんな立場でないのは重々承知の上で申し上げると、二倍の金額を払ってもいいからもっとゆったりしたテンポで、シェフの料理を細部まで理解したソムリエによるペアリングを体感したいと思いました。
なんて感想を記していたらなんと、2023年現在。1日1~2組の完全なる紹介制へとなったそう。コース金額は33,000円。おお期待が高まります。
フランス料理がお好きな方、飲食業界に従事している若手はぜひ伺うべきお店です。グランメゾンやホテルのメインダイニングに比べるとほんの少し煌びやかさは欠けるかも知れません。しかしながら、お料理の迫力が桁違い。フランス料理の完成形を学べます。
まさに質実剛健。キラキラ好きの女子には到底理解できないような食体験。季節を変えて別の食材を、いやまた同じ時期に伺って違いを体感するのも良さそう。とにもかくも必ずまたお伺いします。ご馳走様でした。最高におすすめ。
ル・マンジュ・トゥー (フレンチ / 牛込神楽坂駅、牛込柳町駅、神楽坂駅)
夜総合点★★★★☆ 4.5
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