広尾5丁目?住所は恵比寿2丁目?明治通りの途中を曲がり、渋谷川を超えたすぐ先に、バーのようなファサードが目に入ります。レストランアラジンとかがあるあの辺です。
当店は2019年に開業後、2021年より3年連続ミシュラン1つ星を獲得。
掛川哲司シェフは、AtaやVarmenなどのビストロの他、恵比寿で人気を誇るカレー屋であるGOOD LUCKY CURRYなどのお店をプロデュースされている実力派。
ちなみに店名であるAu deco(オデコ)とは、フランス語・Décoration(デコラシオン)に当てはめて、“レストランでの食事は心を豊かにする装飾”という意味を込めているそうです。
店内に入ると照明はかなり絞られており、落ち着いた空間が広がります。レストランというよりかは、ワインバーと呼ぶ方が相応しいテンションです。
全体の半数にあたる10席ほどのカウンターの席にテーブルが2つ、入り口すぐのところに半個室の席があります。半個室の席は入り口すぐといえど、ほぼ出入りはないのでかなりプライベートな空間で、顔がわれてしまってはいけない芸能人やワケありの方以外のゲストにとってはかなりいい空間でしょう。
この日は軽く食事をしてきてしまったため、アラカルトで。もちろんコースの用意もありますが、アラカルトも充実しており、フランス料理好きな方は、自分で好きなものをコーススタイルに仕立てても良さそうです。
2軒目といえど、乾杯にはグラスシャンパーニュを。シャンパーニュを含みながらメニューと対峙する時間がたまらなく好き。
シャルル・エドシック。スタンダードキュヴェでありながら、複雑味と余韻の長さが群を抜いていますねー。他のエントリーラインのシャンパーニュに比べるとやや割高ですが、価格に見合う味わいです。
お料理を待つ間にアミューズが供されます。
つぶ貝だったかな?エスカルゴバターと合わせてオーブン焼きしたもの。クラシカルですねぇ。この時点で私の好きなスタイルと確信。
グラスでワインを注文。こちらの特徴はなんといっても古酒。1990年代のものを中心に熟成したワインを数多く取り揃えております。古酒とか熟成したワインってどうしても金額が心配になってしまいますが、こちらはかなり良心的。どれも、1杯1,500円〜2,500円ほどの価格帯でお願いすれば、半分量でも出してくださいます。
まずは、グラスで白ワイン。フランス アルザスのピノグリ。パワフルさはないものの、白桃や紅茶を思わせるアロマにかなり丸みを帯びた口当たり。
前菜として選んだのは秋刀魚と馬肉のタルタル。周りにはビーツを用いたソースと上からミモレットチーズが削りかけられています。
これはたまらなく美味しいですね。ねっとりとした舌触りに加え、秋刀魚、馬肉、チーズからくる旨味の三重奏。少し酸の効いたビーツのソースも良いアクセント。
お次はグラスで赤ワインを。フランス ローヌ地方のものでありますが、ブラインドで飲めば凝縮感のあるピノノワールとでも答えてしまいそうな柔らかさ。
量販店や酒屋などでよく目にする生産者ではありますが、20年以上丁寧に熟成させるとここまで変貌を遂げるのか。タルタルとの相性もピッタリです。
メインには当店のスペシャリテでもある、タラバガニと蟹味噌のスクランブルエッグのパイ包み。
これまた素晴らしいお皿です。たっぷりのカニの身による濃厚な風味に、どこか親しみのあるスクランブルエッグが合わさり大変美味。アラカルトでもこれほどのクオリティの料理をいただけるお店が東京に何軒あるだろうか。
赤ワインをいただいた後ではありますが、お料理との相性を勘案して、白に戻る。
これまた熟成した古酒であり、ふくよかな柑橘のアロマに加えて、蜜っぽさ、土壌からのミネラル感、それでいて少し香ばしさも感じられる、とても複雑なワイン。
素晴らしい。これぞ熟成したワインの醍醐味であり、フランスワインのすごさを体感しました。
とはいえ、赤ワインともお料理と合わせてみたかったので、ピノノワールの熟成も同時にいただきました。ピノノワールらしいベリーのアロマを感じつつもこれまた熟成による黒糖やモカを思わせる甘やかさもあり、余韻も充分に長い。
以上、お料理2品に、グラスでワインを1人4,5杯頂き、チャージ税サ込でお会計は1人1.2万円弱。これは良いお店ですね。
クラシカルな王道のフランス料理に、熟成ワインの組み合わせ。思いつきそうなコンセプトですが、体現するのは非常に難しいと思います。ある程度食べ慣れた大人たちが集う上質な空間。個人的にはアラカルトの方が当店の凄さを体感できると思います。
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