再発見(=Redicavery)をコンセプトに和とフレンチを掛け合わせたモダンフレンチ。
山手通りと駒澤通りが交差する中目黒立体からほど近い、目黒川沿いに位置するお店。中目黒駅からだと徒歩7,8分くらいかかります。
苅田支配人兼ソムリエは、ワインソムリエの上位資格であるソムリエエクセレンス並びに、日本酒に関する専門知識を要するSAKEディプロマという資格も保持しており、ワインと日本酒に大変精通している方です。
店内は、入ってすぐにカウンター席とボックスのお席、奥には個室のご用意があります。ロフト席?というのもあるみたい。
カウンター席脇の、大きな窓からは目黒川沿いを眺めることができるので、桜の季節とかはさらに素敵になるでしょう。カウンター席でもしっかりゆとりがあるため、デートなどにも向いているでしょう。。一方で、ご案内いただいたテーブルの席も、二方が囲われているタイプだったので、他のゲストと視線が交わらず、プライベートな雰囲気で過ごすことができました。
訪問したタイミングは周年月出会ったため、お料理は11,000円のスペシャルコースのみの案内でした。
当店の特徴はなんといっても、ペアリング。しかもダブルペアリングといって、一皿のお料理にふたつのお酒を合わせてくれます。トータルの酒量はそこまで多くはないので、飲める方やお酒に興味がある方はペアリングをマストでどうぞ。
乾杯はDuval-Leroyのブランドブランとロゼの2杯。
シャンパーニュが2杯同時に供されるなんてなんとも豪華です。文句なしにテンションが上がります。
アミューズはパリブレスト。
横須賀の名物であるポテチパン。名前の通り、ポテトチップスとキャベツ?をマヨネーズで合わせたものをパンで挟んだものです。当店はそのオマージュとして、シュー生地を用いたパリブレスト風に仕上げてます。お隣の横須賀にこんな名物料理があるのかという新しい気づきではあるものの、想像通りの味わいで、個人的には、わざわざレストランで頂かなくていいかも。
前菜1品目は、ずんだと天使の海老。
ずんだに火入した海老、コンソメのジュレを合わせてます。海老やコンソメジュレに、ずんだの甘さが加わり旨味がパワーアップ。
ペアリングには、ドイツのフランケンのワイン。ボックスボイテル(Bocksbeutel)と呼ばれる特徴的な形をしたボトルです。しかも3Lサイズ。初めて見ました。
鳳凰美田。「酒米のダイヤモンド」と呼ばれる愛山という酒米を使用し、華やかながら上品でエレガント。ずんだとは異なる甘みのベクトルを持っており、お料理との相性もよかったです。
お次は、ニース風サラダと鰹を一皿に表現したもの。味自体は良いものの、ポーションがやや少なく、何を食べてるのか分からなかったです。合わせていただいたお酒が魅力的だっただけに、もう少し鰹を堪能したかった。
こちらには、チリのソーヴィニヨン・ブランと磯自慢の大吟醸。
磯自慢のどっしりとした酒質がカツオとぴったし。個人的には日本酒との組み合わせの方が好みでした。
温菜には、チョロと呼ばれるバスク風のブイヤベースに煮鮑を合わせたもの。
煮鮑のグニュっとした食感と深みのあるスープの旨味がいいマッチング。
合わせるワインは、ブルゴーニュのピノ。しかも1級畑の垂直(同じ産地のもののヴィンテージ違い)の飲み比べ。この金額のペアリングとしては考えられないくらいの豪華さ。
同伴者はそこまでワインに詳しくないのですが、2つのグラスを行き来し、「私はこっちの方が好みだな。あれ、でもこっちも良いな。」という具合に飲み比べて楽しんでおりこちらまで嬉しい。
魚料理は、鯰(なまず)を用いたもの。
なまずって食べれるのかと一瞬驚きましたが、ムッチリとしたマッチョな身質です。味わいとしては鰻に近いような感覚。
ソースはグルノーブルソースといって、レモンやケッパーに少量のバターを合わせたソース。同様の食材で作るブールノワゼット(焦がしバターソース)はバターによるコクが支配的ですが、こちらのソースは思いのほかさっぱりしていました。
ワインはフランスブルゴーニュの白。
シャブリ。上級のシャブリは樽熟成を行うことが多いのですが、この作り手はそれを行わず、土壌由来の骨太かついきいきとした果実味を前面に表現しています。先のソースと非常に相性がいい。
もう一方のワインも王道の組み合わせ。おシャサーニュモンラッシェ。
ここまで比較的、和の要素が強く軽やかでインパクトに欠けていましたが一気にフランス料理と化しました。本日1番のお皿並びにワインでした。
メインは鹿肉。シンプルにローストしてあります。薔薇のエッセンスを加えたソースのアイデアは素晴らしものの、若干鹿肉自体が、鉄っぽく感じました。まぁこの金額であるので文句は言えませんが。
ここでもなおワインは2種類。凄まじい。10種類以上の飲料を飲ませてもらっている。
一方は、カリフォルニアのカベルネソーヴィニヨン。フレーズだけ聞くとパワフルな味わいを想像しますが、なんと1994年のもの。30年近くの時を経たこちらは非常に角が取れてエレガント。私も30年後これくらいエレガントになれるかな。。
もう一方のイタリアのメルロも素晴らしかった。個人的に、イタリアの赤って熟成させてからがいよいよ本領発揮するなと思います。
〆には豚足?を使った味噌カツっぽいものとおこげを合わせながら頂きます。
ペアリングには、乾杯で供されたDuval-Leroyをスティルワイン(非発泡性ワイン)風にして頂きます。
あえてガスを弱める工夫をすることで、より風味を味わうことができます。
シャンパーニュに始まり、シャンパーニュで終わる。1本のボトルを異なるスタイルで楽しめるのはなんと魅力的な液体なのでしょう。
デザートには、コースの頭で供されたパリブレストを我らが誇る東京の銘菓レーズンサンドのエッセンスを織り交ぜたものです。コンセプト通り、姉妹都市を周遊したような気持ちになりました。
ここでもなおダブルペアリング。凄まじい。無粋にも一回の営業で何脚のワイングラスを使用しているのかと計算してしまう。王道のデザートワイン、ソーテルヌに加え、熊本にルーツを持つ赤酒。みりん似たような味覚で、冷やして飲めばなかなかにイケます。
以上、コーヒーを頂いて〆。コースにペアリング、途中追加でグラスワインを頂いてお会計は一人2.5万円弱。めちゃくちゃ素晴らしい。ゆったり3時間以上滞在してしまいました。今回は、当店の周年にあたる月にお邪魔したので、通常であればペアリング込みでも一人2万円を切るでしょう。
お料理は、コンセプトである再発見やつながりにしっかりと焦点が当てられているものの、ややポーションが少ないなと感じてしまう瞬間が何度かありました。フランス料理という気分で訪れると少し物足りないかも。ただ、色々少しずつ食べたいなどの女子会にはもってこいなのかもな。
一方、ペアリングは、圧巻。1皿に対して、2つのグラスを合わせ続ける、それだけでもすごいことなのに、その全てのグラスに明確な意図があり、飲み進めていくのが非常に楽しかった。
加えて、ゲストとコミュニケーションをしっかりと図った上で、飲酒量を調整してくれるホスピタリティ。ついつい相手に合わせて飲まなきゃと思いがちですがお店の配慮があるのでご安心を。私はよく飲む人種なので足りなくなると継ぎ足してもらいました。絶賛高騰中のフランスワインにおいても惜しまずしてくれる懐の深さ。
非常に論理的に構成されており、説明を聞くのが楽しいレストランでした。食いしん坊でせっかちな人には向かないと思います。ゆったりと時間を過ごせる間柄で、ぜひお酒好きの美女を連れてデートでどうぞ。
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