2011年に開業し、翌年にすぐミシュラン1つ星を獲得すると、翌年(2013)ミシュラン2つ星を獲得し、以降2023年まで継続している「レストラン リューズ(Restaurant Ryuzu)」。
店名のリューズはアナログ時計の重要部品であるリューズ(竜頭)にちなんでおり、「ーそんな様々な時の流れを紡ぐ上質な空間を創りたいー」というコンセプトを掲げていらっしゃいます。
シェフの飯塚隆太氏は、渡仏の経験はもちろん、ラ ターブル ドゥ ジョエル・ロブション並びにラトリエ ドゥ ジョエル・ロブションのシェフを務め、満を辞して2011年にこちらをオープンされました。
六本木交差点の近くにある麻布警察署の向かいのビル?の地下一階に位置します。高級マンションのエントランスのような門構えでかっこいい。
店内は、テーブルのお席に、いくつかの個室、さらにはカウンターの席とあり、全体で30席ほどのキャパです。全体としてゆったりした空間であるなという印象を受けました。大事な接待や会食、お顔合わせなんかに重宝しそうです。
今回はランチでの訪問。座席はカウンターの席に通していただきました。
初めはグランメゾンでカウンター?と少し懐疑的だったのですが、個人的には大変満足度の高い座席となりました。
グランメゾンのお料理って一皿に何人もの料理人が関わっているので、裏側がなかなか見えないのが良くも悪くもだと感じていたのですが、当店は、目の前で調理工程を見ながら食事をすることができ、臨場感たっぷりでした。
バックヤードでももちろん失敗は許されないでしょうが、それをゲストの監視下の前で、調理し続けている料理人の方には敬意しかありません。どれだけのプレッシャーなんだろう。。。
むしろこの状況すらも楽しんでいるようにみえ、食事前から既に楽しい。
今回はランチコースの”Menu du Jour”でお願いしました。
ドリンクは料理に合わせて5種(9,000~)のワインペアリングをお願いしました。
乾杯のシャンパーニュはペアリングには含まれていないので別途注文。
家族経営を貫くメゾン。リンゴや洋梨などの果実に、ビスケットのようなアロマ。非常に繊細ながらブドウの旨みをしっかりと感じられる。好き。
アミューズは朝採れとうもろこしのスープ。グリーンオリーブを練り込んだ小さなマドレーヌもついてきます。
シンプルな料理ながら、素材の良さを十分に感じる仕上がりです。夏の訪れを感じます。
パンは素朴なタイプであまり印象に残りませんした。
とか言って全部食べたけど。
前菜は、ウニとホワイトアスパラガスのババロア。
3つのソースで鮮やかに彩られた表面は大変美しい見た目ですね。これぞロブションの伝統芸能。
ババロアの下には想像を超えるウニが隠れており、コース前半から思わずニンマリしてしまいました。
合わせたワインはオーストリアのリースリング。なかなか攻めたセレクトですね。
ピュアでエレガントな酸と緊張感すら感じるピシッとしたミネラル、鉱物っぽいニュアンスを感じます。
ウニってワインと合わせるのが非常に難しい食材だと思うのですが、こちらのワインはウニとホワイトアスパラをうまく取りまとめてくれました。序盤から心掴まれたペアリングでした。
2品目は、アナゴのベニエ ピペラードのソースと刻みギンディージャ。
ピペラードとは、フランスバスク地方の家庭料理で、トマト、ピーマン、ニンニクやタマネギをオリーヴ油で炒め、エスプレット唐辛子を加えたもの。ギンディージャとは青唐辛子の酢漬け(ピクルス的な?)を指し、スペイン料理でよく登場します。
ふっくらホクホクの歯触りが心地よい。トマトやギンディージャのタイプ異なる酸味が、いいアクセント。
合わせたワインはシャブリの特級畑のもの。
一般に浸透しているシャブリ”のイメージとは異なり、樽の風味が綺麗に溶け込んでいます。
さすがグランクリュ(特級畑)。ブドウの力強さが桁違い。もちろん、綺麗な果実味と酸もあり、穴子のベニエとの相性もいいです。
これほどのクオリティの高いワインを合わせて楽しめるのは、グランメゾンならでは。
テンションがますますあがります。
お次はスペシャリテ。八色椎茸のタルト。
パイ生地の上には、細かく刻まれた椎茸が敷き詰められさらにそれを肉厚の椎茸が覆います。これがべらぼうに美味しい。薄くてっぺんに添えられているラルド(豚肉の背脂の塩漬け)も絶妙な役割を果たしています。椎茸を使ったお料理では個人的に一番好き。
こちらにはフランス ローヌのカベルネソーヴィニヨン。ローヌでCS100%?と一瞬戸惑いましたが、甘やかで濃いわりにはタンニンはさほど感じず、面白いワインでした。
こちらも季節限定のスペシャリテ。鮎のクルスティアン 生姜と胡瓜のコンディメント 蓼と緑胡椒のソース。
連続してスペシャリテを頂けるのは非常に嬉しいですね。ラッキー。
涼やかな見た目で、季節感に溢れたお料理。
クルスティアンとは一般に、お菓子作りなどで用いられることが多いですが、フランス語で”サクサクとした”を指します。
こちらの鮎は3枚におろし、中骨は骨せんべいにして、身の外側にはパートフィロで包んでいます。
クリスピーな歯触りから始まり、ふっくらした身の食感のコントラストが楽しい。
よくスイカのような香りがすると言われる鮎と瓜系の食材の合わせ方も安定感。
少しマニアックになりますが、鮎は藻などのケイソウ類をよく食べ、その中に含まれる不飽和脂肪酸が鮎の消化器官の酵素で分解されるとそのような香りを発するそうです。
ワインはオーストラリアのオレンジワイン。リースリングを用いたものだそう。
オレンジピールや金柑、杏のようなニュアンスを感じました。
メインはニュージランド産仔羊のロースト ジュを用いたソース。
これは素晴らしい火入れですね。シンプルながらよく目にする料理でありますが、素材並びに調理のレベルの高さをヒシヒシと感じます。
ポーション並びに付け合わせのお野菜も抜群で、気分がクレッシェンド。
ペアリングのワインはボルドー 格付け第3級のシャトーラグランジュ。しかもグレートヴィンテージである2005年のもの。
言わずもがな素晴らしいワインであり、ペアリングとしても文句の付け所がありません。最高。。。
当店のソムリエのセンスは頭一つ抜きんでて素晴らしいですねぇ。産地や造り方よりもワインとして飲料としてのクオリティが高いかどうかを重要視したセレクションであるなと感じました。要所要所で、クラシカルで王道なワインをしっかりとチョイスしており、緩急自在。
デザートは失念。
ミニャルディーズと珈琲をいただきフィニッシュ。
コースにワインペアリング、冒頭のグラスシャンパーニュで、お会計は税サ込で2.4万円ほど。これはめちゃくちゃ素晴らしい。一皿一皿のクオリティの高さはもちろん、印象的なスペシャリテから王道の肉料理まで非の打ち所がありません。
サーヴィス陣は若めの方が多いものの、皆が自信に満ち溢れおりいい意味でエネルギッシュな空間であるなと感じ、好印象。
六本木のフレンチと聞いて、初めは変なギラギラを想像していましたが、当店は大変クリーンで本物のフランス料理店でした。デートはもちろん、接待や会食などの重要な食事の場面でも外さないお店でしょう。
レストラン リューズ メニュー
ランチは、”Menu Déjeuner”(7,000)と”Menu du Jour”(10,000)の2種類からなり、スペシャリテなどを召し上がりたい方は後者をチョイスすべきでしょう。
ディナはー3種類、全5皿からなる”Menu Dîner”(14,000)、全7皿からなる”Menu Dégustation”(20,000)、こちらに高級食材を取り入れた”Menu Ryuzu”(28,000)。ミシュラン2つ星でこの立地、この格のレストランの食事が1.5万円から試せるのは非常に良心的。
ドリンクはグラスシャンパーニュが2,100〜と若干高く感じますが、食事代が安すぎると考えましょう。グラスワインは4種類ずつ用意があり、1,500〜4,000円ほどのレンジです。ペアリングはランチで5種9,000円と、内容を考えたら大変お買い得なので、ワイン好き、お酒好きはこちらもおすすめです。
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