吉祥寺にある「トラットリアチッチョ」のシェフを務めた松原達志氏と同じく「ビストロハッチ」のソムリエ兼店長を務めた松原憲作氏の松原ブラザーズが独立開業したオステリア。
料理はイタリアンをベースにし、自ら目利きし、こだわりの国産の食材も多く取り扱っています。
オステリア(≒居酒屋)らしく、酒の酒類は豊富でグラスワインは常時15種類近くは空いているでしょう。イタリアワインを中心に、その土地や品種、生産者、それらを感じることができるラインナップで私は結構好き。
余談ですが、(お二人が以前勤めていらっしゃったお店と比べると)若干高くなったなんて声をたまに耳にするのですが、あれはあちらのお店が安すぎただけで、当店の値付けは妥当だと思います。
良い食材を見つけるためには現地に足を運ばなければいけないし、ゲストを喜ばせるためにグラスワインの種類を増やせば、売り残ってしまうリスクも高まります。値付けというのはあらゆる要素で決定されるものであり、仕入れ値の何倍のような単純なものではないのである。
温度管理や提供のタイミングなどのほぼ完璧であり、それでいて1杯1,000円〜2,000円弱で飲めるんだから、いいじゃないか。
ということで、料理に合わせて適当にグラスでビシビシ出して頂くようお願いしました。
乾杯はグラスシャンパーニュ。シャルリ エ フィスによるピノムニエを主体としたもの。リンゴや白桃のような厚みのある果実味に、樽発酵由来のブリオッシュのような香り。
当店のスペシャリテである淡路産新玉ねぎのムース。フレッシュかつ優しい甘みが口の中いっぱいに広がります。その後トッピングされた黒胡椒と一緒に食べたりすると、また表情が異なる一皿でした。
サルデーニャのからすみとズッキーニ。メニュー名そのままの一皿で、料理というより素材であり、あまり記憶に残りませんでした。
ワインはフランスラングドック地方のピクプール。搾りたてのレモンやライムのような爽やかさに加え、アフターにほのかに蜂蜜を思わせる甘さを感じました。
シチリアのネロ ダーヴォラのロザート。ストロベリーやブラックベリーのフルーティかつフレッシュな果実味。先のお皿にはこちらのワインの組み合わせが思いのほかグッド。
お次はジャンボマッシュルームのインパナート、いわゆるパン粉をまぶした料理のこと。思わずかぶりつきたくなる見た目ですが、火傷するのでご注意を。たっぷりのジュと肉厚な旨みはこのサイズだからこそ。1個1,400円と躊躇うかもしれませんが、その価値は十分にアリ。
こちらにはマルケ州のヴェルディッキオ。ラ ディステーザという生産者のもので厚みがありリッチな味わい。加えてトーストのような香ばしい香りがパン粉とリンクしてベストマリアージュ。
フランス ロゼールの仔羊のもも肉を用いたパイ包み。見た目も味わいもかなりの正統派。一瞬フランス料理屋に訪れているかのように感じるほど。マッシュルームを用いたクリームのソースも香り高く、量もたっぷりなのが大変嬉しい。
ピエモンテ ロエロの赤。ネッビオーロを用いているとは思えない軽快な味わい。ラズベリーやプラムといった果実にバランスのとれた酸、タンニンは中程度であり、新世界のピノノワールに近いような味わい。
フリウリのメルロ。メルロらしく濃い果実にキノコや腐葉土、やや熟成感もある味わいです。
まだまだ食べれそうだったのでパスタとリゾットを追加注文。この辺りは皿を分けてお持ちくださいます。
フレッシュトマトとバジルのスパゲッティーニ。イタリア語で”夏の”を意味する「エスティーボ」とは、トマト、バジリコ、オリーブオイルで和えた冷製タイプのもの。
行ったことはありませんがイタリアの風を感じました。麺が伸びやすいので黙って完食。
とはいいつつ、こちらにもワインを。お次はロエロのアルネイス。フルーティーで親しみやすい味わいです。
この日はイカスミのリゾット。アオリイカとグリーンアスパラガスが添えられてます。
先日、恵比寿のイルバロンドーロで頂いたものよりも個人的に好きな方向性で、かなり濃厚。香ばしく焼かれたアオリイカやアスパラもいいアクセント。
シチリアのマラビーノ。ワインを勉強した方にはカラブレーゼのほうが伝わるでしょうか。サクランボやクランベリーを思わせるアロマに、チョコレートのようなコクも若干感じました。
ご厚意で頂いたロワールのロゼ ペティヤン。グロローとガメイからつくられたものでチャーミングな味わいが心地よい。イカスミにロゼ、印象的な掛け合わせでした。
デザートの代わりにチーズを。
〆に赤ワインをといいながらもグラッパやアマレットなど大盛り上がり。
21時前の遅い入店だったにもかかわらず3時間くらいお邪魔しちゃいました。すみません。
この日のお会計は1人1.7万円強。これはバカみたい食べ飲みした結果であり、通常であれば1人1万円前後に落ち着くでしょう。
良い食材に洗練された調理技術、それでいて懐に飛び込んでくる軽快なサーヴィス。美味しいものを食べ慣れたオトナにぴったりのお店。
コース1本、21時以降バータイムのような個人店が増えてきた中で、「選べる」アラカルトの良さを改めて実感しました。好きなものを好きに選べて心置きなく飲食ができるって最高の贅沢だよね。
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