ル・ブルギニオン(Le Bourginion)/六本木

フレンチ

 

六本木駅と西麻布からそれぞれ少し離れたところに位置するフレンチレストラン。麻布消防署がある通り沿いです。

オーナシェフの菊池美升氏は、20代で渡仏し、リヨンやモンペリエでの滞在を経て、ボーヌのレストラン「エキュソン」で務め、帰国後当店を開業。

店内は20席ほど。この手のレストランとしてはよくあるサイズ感ですが、テーブル自体がかなりコンパクトであるため、状況によってはワイングラスやカトラリーなどをテーブルのかなり端にに置いておかなけれなりません。食中手などが当たって落としてしまわないか常に不安で、あまり気が抜けない食事時間が続きました。

 

着席前のセッティングについても、このようなご時世だからアクリル板の使用自体は仕方なく思う反面、板の土台の部分にバターのお皿が置かれているのを見てレストランってこんなもんなのかーとややテンションが下がる。重ねて、ゲストそれぞれに配膳されているバターの向きがアシンメトリーであり、その意図が気になって仕方ありませんでした。

 

気を取り直してお食事へ。ディナーはデザートを含む計六皿のコース(11,000円)のみのご用意で、メインの肉料理をその日にあるいくつかのラインナップの中から選びます。我々は、本日の内臓料理にあたるエゾシカのパイ包み焼きをチョイス。

グラスワインは泡1種類に、最低でも白、赤それぞれ2種類以上ずつ用意があり、さらにそのどれもがフランス産でありました。支払い金額からするにほとんどのものが1杯1,800円前後です。


ボトルのワインリストはお店のホームページで公開もしていますが、さすがフランス料理店。フランス産のラインナップは都内のレストランの中でもかなりの充実度で、かつ値付けも良心的。菊池シェフは毎年フランスに研修にいかれるそうなのですが、その時にご自身で買い付けでもしているのかもしれません。


乾杯はグラスシャンパーニュを。シャルドネとピノ・ノワールを主に用いて作られたもので、リンゴの蜜部分のようなふくよか果実味を感じつつも、酸もしっかりとあり、フレッシュな余韻。全体としてまとまりを感じるものでした。

アミューズはグジェール。シュー生地の中には豚肉のリエットとチーズが入っていました。奇を衒わないスタイルであり、安心する。

 

前菜には、茄子とズワイガニのムース。ミルフィーユ仕立て。バルサミコのソース。ズワイガニの濃い旨味と茄子が良い相性。酸の効いたソースもアクセント。

 

お次は、フォアグラのポワレ。下にはカカオ風味?チョコレート?のパンのようなものとバナナのマリネ、イチジクが付け合わせに。ソースはポルト酒を用いて作られたもの。

フォアグラの質ならびに量は素晴らしいのですが、付け合わせがイマイチ。常連客らしき他のゲストはチョコバナナだ!と大声で笑い、シェフを呼びつけていましたが、私としてはそこまでの感動はありません。普通にブリオッシュとかでいい気がする。


ワインはお料理に合わせてグラスで。ブルゴーニュの村名。木苺や野イチゴのような赤系の果実に引き締まった酸味を感じます。最近ではあまり見かけなくなったクラシカルスタイルのブルゴーニュって感じで好みの味わい。


お魚料理は甘鯛。土台にはイカスミのリゾットとムール貝が敷き詰められ、そこに貝出汁をベースにしたスープが注がれます。

これは素晴らしいお皿ですね。甘鯛の質並びに水分をほぼ逃さないような火入れの巧さはもちろんのこと、ムール貝と貝のスープによる旨味が全体の味覚をさらに底上げしてくれます。


こちらには、ブルゴーニュの1級畑 シャサーニュ・モンラッシェ。熟した果実味に加え、アカシアの花の香りにハチミツを思わせるアロマなどリッチな味わい。魚介類の旨味と見事に調和し、料理の余韻をさらに長く引き伸ばしてくれます。これは間違いない組み合わせでありフランス料理の凄さを改めて感じます。


メインはエゾシカのミンチ肉をパイで包んだもの。ソースには黒胡椒が用いられているそう。

ミンチにされた鹿肉は思いのほかクセはないもののしっかりとした旨味で、ワインが大変進む。しかし、赤ちゃんの握り拳ほどのサイズ感で、ディナーのメインとしてはやや迫力にかける。上品に食べ進めなければ3口前後で食べ終えてしまいそう。他方、シンプルであるもののしっかりした質並び量の付け合わせ。

こちらには、ボルドーの赤。ある専門家によるブラインドティスティングで、かのシャトー・ペトリュスと張り合ったとされるワイン。円みを帯びてはいますが、しっかりと骨格があり、お料理に負けないワインです。

デザートにはモンブラン。お米のバヴァロワとの珍しい組み合わせでした。


コーヒーで〆。

以上、11,000円のお食事にグラスでシャンパーニュ、白赤合わせて3杯いただき、お会計は税サ込一人2万円ほど。港区でフランス料理店でディナーをしたと考えれば妥当な支払い金額なのかもしれませんが、如何せんサーヴィス陣の対応が残念。

あまりこちらの食事のペースを気にしていないのか、他のゲストの調理の兼ね合いなのか知りませんが、まだ半分ほどしか食べ進めていない状態でも、サーヴィスの方から「次のお料理が参りますので」と複数回催促される。一斉スタートのコース料理とかならまだしもなんでゲストの我々が食事のペースをコントロールしなければならないのか疑問が残る。大幅に、食べるスピードが遅かったのかなと帰り道カメラロールを確認すると、18時19分にグラスシャンパーニュで乾杯してから、20時13分に明細を受け取るまで滞在時間は2時間にも達していませんでした。

加えて会計の際に注文していないはずのグラスワインが伝票に記されていたので、杯数が違う旨をこちらから指摘すると、悪びれる様子もなくただ伝票を刷り直してくるだけの始末。

当店におけるサーヴィス料10%とは果たしてなんだったのでしょうか。

会計時すぐさまカードを渡して支払いを済ませることをスマートと履き違えている人をたまに見かけますが、今回のように人間誰しも間違いを犯す可能性はあるため、伝票には必ず目を通すことをオススメします。

料理そのものやワインのラインナップはクラシカルで好みの部類に入るものの、レストランとは総合演出であると改めて実感しました。レストランに対して、ある程度リラックスして、サーヴィスの方に身を任せて食事をすることを求める私のようなタイプにはあまり相性が良くないお店でした。同様の金額を支払うのであれば参宮橋にある「レストランキノシタ」に軍配。

他方、ランチは5,500円から受け付けているそうなので、フランス料理好きはまずはランチで伺うことをおすすめします。

評判がいいレストランだっただけに少し心残り。誤解なきよう記しておきますが、菊池シェフは笑顔で我々をお見送りしてくださる素敵なお人柄の持ち主でした。

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