新富町と宝町を直線で結んだ、ほぼ中央に位置するビストロ・シンバ。それぞれの駅から、歩いて5分ほどです。
店内は、オレンジ色を基調とした温かな空間が広がります。4席ほど?のカウンター席といくつかのテーブル席で、合計20席前後でしょうか。我々はカウンター席に通されましたが、この手のタイプのお店にしては、意外にもゆったりしていて落ち着いて食事を楽しむことができました。
主にオンラインにて予約を受け付けていますが、なかなか17~20時のゴールデンタイムはどの日も予約で埋まっているため、この日は15時台と時間をずらして訪問。最近では、20時以降でしたら比較的予約が可能っぽいです。
オーナーシェフである菊池佑自シェフは、調理師学校を卒業後、渡仏。3つ星レストランを含むさまざまなお店で修行後、帰国。ビストランRNSQでのシェフをご経験後、当店をオープンされました。
お料理は6,600円~のおまかせコースもありますが、アラカルトで勝負。
当店はビストロといえど、骨太でドーンとした料理とは対照的に丁寧で綺麗なお皿が多いので、そこそこ皿数を取らないとお腹いっぱいにはなれません。2名だと5~6皿くらいが丁度いいボリュームになるかと思います。
乾杯はシャンパーニュ。若手生産者が手がけているもので、熟したリンゴや黄桃、淡いパイナップルのような蜜っぽさも感じられます。味わい的にもなかなかタイプでこうした雰囲気のお店でいただくとなおのこと旨し。ただ、これで2,000円近く取られるとなると、量がやや少ない。
連れがいただいた泡はシュナン・ブラン100%で作られたもので20g/Lの甘みを感じる面白いタイプでした。
1皿目は金目鯛のカルパッチョ。新玉ねぎとフキノトウのフリット。
これは素晴らしいお料理ですね。ローストされたタマネギの甘み、ふきのとうの心地よい苦み、金目鯛の旨みが口中を彩ってくれます。生のお魚を使ったお料理って単調になりがちですが、心掴まれるスターターでした。
お次は、ロワール産のホワイトアスバラガス イカとカルダモン。
シンプルながら豪快な火入れで、バリっと焼き上げられた外側に刃を入れると、中からは瑞々しいジュースが溢れ出ます。美味しい。
また、カルダモンの香りが良いですね。アスパラとイカのホワイト系の食材をうまく取りまとめてくれています。
当店のコンセプトである、「香り」「温かさ」「シンプルさ」がまさに感じられた瞬間であり、幸福感。
こちらには、オレンジワインを。マンダリンのようなオリエンタルな香りがさらに、食材の香りを引き立てるとともに、じわっと広がる旨みがアスパラガスとの旨みの広がり方と似ており、言い合わせだと感じました。こうしたシンプルなお料理とナチュラルワインの自然的な旨みの掛け合わせかたの可能性を感じました。
続いてはトラフグの白子 カダイフフリット。カダイフ(kadaif)とは柔らかいを意味する麺の一種で、よくお魚料理の調理で用いられたりしますね。バリっとした食感が特徴。
中のトラフグはトロットロでこのままソースにも化してしまいそう、火傷注意です。ベニエやムニエルという調理がよく用いられますが、カダイフをここで用いるのも興味深く、いい意味でビストロらしいカジュアルさを感じました。私は。
白ワインに戻り、サヴァニャン。ジュラを代表する古くから存在する品種。
なるほど、ヘーゼルナッツやくるみのようなナッティな香りはこの料理とアリよりのアリなのですが、酸味がやや多く感じ、ここはマコンのシャルドネのような少しふくよかな果実味を感じるタイプも合うのではないかと思いました。
牡蠣とキノコの香草バター焼き
シンプルに旨いですねぇ。火入れして身が縮まってもしっかり食べ応えのあるサイズ感。バケットとかもらって下のソース全部拭えばよかった。
ここでは、赤ワイン。牡蠣に赤ワイン?って思ったそこのアナタ。牡蠣に限らず魚介類全般に言えることかもしれませんが、生の状態だとどうしてもワインの樽の香りとバッティングして、魚臭さみたいな特有の香りを誘発してしまう可能性が出ますが、加熱すると意外とワインの選択肢が増えます。
こちらはフランスのガメイだったかな。ラズベリーなどのチャーミングな赤系果実に、シュワシュワとガス感を感じます。
コース料理やペアリングでいつも思うのが、同じようなテイストのワイン、例えば白ワインが3回とか続くとどんなに良いものでも少し感動が半減してしまうというか。抑揚や緩急が重要だと思うのです。
その意味で言えば、ここで赤ワインを投入していただいたのは全体として非常に良い効果がありました。意図しているかどうかは知りませんが、これをライブでやってくれるは大変素晴らしいソムリエだなーと感服しました。
スペシャリテのブイヤベース。当店は目の前でココットからお皿にスープをそそぎ、仕上げてくれるスタイルです。
1人前1,760円なんだから文句言うなよと言われてしまうかもしれませんが、お魚ちゃんたちが貧相。手前の鯛とか全然食べた気がしなかったし。まあスープをいただく料理と捉えれば別に気にすることじゃないのかもしれません。
お味は魚介の香りを感じられたわりかし上品なタイプでした。
ワインはフランス、南西部ルーションのヴェルメンティーノやマルサンヌを用いたもの。
黄桃や熟したリンゴなどニュアンスに若干のアロマティックさが、心地よい。良いですね。
以上、お料理5品にシャンパーニュを合わせグラスでそれぞれ5杯ずつ頂き、お会計は一人1.3万円強。なるほど納得の支払額です。
HPにも料理の提供が遅くなることの断りが書いてありますが、料理人の数に対して、席数とメニュー数がやや多く、ピークタイムはやはりある程度待つことが予想されるでしょう。
また、グラスワインの量が若干控えめなので、私のような大酒飲みの人はかなり高く着きそうです。
なんて書きましたが、総じてとても素敵なお店だと思います。いい食材をシンプルに熱々で食べさせるそんなお料理たちです。
ワイン選びに関しても申し分ありません。あまりナチュラルワインは得意としないのですが、おそらくクオリティの高いものばかりを取り揃えており、ナチュラルかどうかはさておき、ワインとして美味しいと感じるものがほとんど。料理に合わせていくつも持ってきてもらいましたが、ペアリングセンスも抜群。即興でこれだけなのだから、あらかじめ準備させたらどうなってしまうんだろうと期待してしまいました。
腹一杯食べに行くと言うよりかは、仲のいいふたりでゆっくりおしゃべりしながら、好きなものを上質なワインでちびちびとやる、小料理屋的使い方がいいのではと個人的には思いました。
ビストロシンバ ワインバー
本店のビストロシンバから一本道を歩くこと5分。2022年9月にワインバーがオープン。店名のパ・ロワンはフランス語で遠くないという意味を指します。
チャージなどなく、スタンディング形式のカジュアルな業態らしいです。少し早く着いてアペリティフ的な使い方をして、シンバに向かうのももちろん、この辺りで食事をしてからサクッと使うのも良しでしょう。今度行ってみよー。
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