EUREKA(ユリーカ)/広尾

日本酒

日本酒業界で最も有名な女性のひとりでもある千葉麻里絵氏が2022年11月に満を持して独立開業したお店「EURIKA」。千葉氏はシステムエンジニアから飲食業へ転身し、「新宿 酛」での勤務を経たのち恵比寿「GEM by Moto」の立ち上げおよび店主を務めたほか、日本酒とのペアリングについてまとめた「SAKE PARING」などの著書の執筆も行なっています。

西麻布から渋谷方面に少し進んだあたりにある複数の飲食店が入居するマンションの2階に店を構えます。店内に入るとJの字の大きなカウンターが迎え入れてくれ、カウンターと立ち飲みの席が主体ですが個室の用意もあるそうです。

日本酒は1合換算1,500円〜とそれなりのお値段ですが徹底した管理やペアリングの精度の高さを思えば納得。サーヴィス料が含まれているくらいと捉えればいいでしょう。食事は居酒屋などでも見かけるカジュアルなものが多いですが、食材の組み合わせが面白く興味が惹かれます。

スタートに新政No.6のスパークリングを。今や大変貴重な銘柄となった新政酒造のお酒を潤沢にストックしているのは店主と酒蔵の信頼関係があってのことなのでしょう。

お通しにはスープが供されます。

スペシャリテのうふマヨ❤︎。イカ墨を用いたソースをたっぷりと身に纏っており見た目のインパクトがすごいですが味わいは思いのほか繊細。

こちらにはかなり前衛的な「権化 PEAT」。日本酒造りにおいて通常は削り取る米糠の部分すらも藁焼きにして使用したり、一般的な醸造の7倍にあたる約半年もの期間を発酵に時間をかけるという。

藁焼きによるものかスモーキーな香りに、アルコール度数以上の濃厚な旨みを感じます。先のウフマヨと合わせると、先日訪れた大涌谷の黒たまごの情景がうっすらと思い浮かぶ。

たこ、ぶどう、うに。普通に生活していれば思いもつかぬような組み合わせで面白い。

柿とチコリの白あえ。シャキッとした食感の同調が心地よく優しい甘みがゆっくりと広がっていきます。

風の森 秋津穂657。65は精米歩合、7は7号酵母のことを指すらしく、風の森らしいピチピチとしたガス感に白桃やメロンを思わせるフルーティーな味わい。

牡蠣と海苔とブルーチーズのルイベ。ルイベとはアイヌ語で「溶ける食べ物」という意で、もとは冬に魚を食べるための冷凍保存食のこと。

当店のソレはおそらく牡蠣をペースト状にして他の素材と混ぜ合わせた冷やし固めたのでしょう。磯の風味やブルーチーズの独特の風味がドッと押し寄せてきます。単体で食べるにはなかなか個性的なので、お酒と一緒に食べることを断然オススメします。

お酒は「ナマカン」。店長曰く生酒のお燗ver.とのこと。私の浅い知識によれば生酒(≒火入れしていないお酒)は冷たい温度でフレッシュさを楽しむという認識であり、これは初体験。

しかも用いるお酒は、上喜元の氷温熟成(0℃以下からモノが凍り始めるまでの氷温域、日本酒では−5℃だっけ?、で貯蔵すること)。それを熱燗器で温め、さらにはエアレーションまで施すとは興味深い。

肝心のお味ですが、ヘーゼルナッツを思わせるような香ばしさやコク、白桃のような華やかな香りも感じられ大変美味しい。2023年に頂いた日本酒の中で最も記憶に残る1杯でした。

もちろん、先のルイベとの相性は抜群です。

以上、乾杯からスタートしてそれぞれの料理に日本酒をペアリングしてもらいお会計はひとり8,000円弱。飲食量だけで考えればやや高いですが、支払い金額以上の食体験です。

日本酒の強みである飲用温度帯の広さを存分に活かしているのはもちろん、グラスの選定や、個性的な造り手の発見など、学びが多かった。期間をあけてまたお邪魔したいお店、スタンディングエリアでサクッとアペロ利用なんかも良さそう。

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